島キャン実施レポート

都会から離れて

2023年夏 奄美大島
マングローブ公社
9/1~9/14
武蔵大学/経済学部  小柳翔
台風とカヌーとマングローブ
スタンスが命
【最終日】お世話になった皆さんと

私は今まで個別指導塾・トレーニングジムでのアルバイト、学部横断型ゼミ、就活など大学生活を通して様々なことを経験してきました。そんな私が学生最後の夏、1人で遠くに行きたい!行った場所でコミュニティに参加し価値観を広げたい!そんな思いを抱いて見つけたのが「島キャン」でした。

私の就業先は「マングローブパーク」という道の駅でカヌー体験の接客業務が主な仕事内容です。しかし、就業日初日、猛威を振るった台風16号に遭遇しました。そのため、運よく一度カヌーの接客ができたものの、1日の午後から台風が過ぎる8日までは、園内作業(草刈り&草集め)と休館(4日間)が続きました。その結果、就業前と終業中とでのギャップを大きく感じ、仕事に対するスタンスが悪くなってしまいました。実際にそれを見た社員さんにお叱りを頂きました。

この経験から、働く上で仕事に対するスタンスの重要性を学びました。具体的には、スタンスが悪いとパフォーマンスが低いのはもちろんですが、その空気感が周りに伝播し負の影響を与えかねないということです。一方で、スタンスが良いと、高いパフォーマンスを発揮し、周りを元気づけるなど正の影響を与えることができます。実際に、仕事内容に関係なく積極的に取り組む社員さん達を見て「もっと頑張ろう!」という気持ちになりました。また、社員さん達とお話をしている際に、「仕事に面白さを発見し、いかに楽しめるかが大事だ」ということをお聞きし、非常に腑に落ちたことが今でも記憶に残っています。

その後、島から帰って個人的に「内容に関係なく仕事を楽しむためにはどうすれば良いか?」について考えたので最後にそれを共有します。

結論、①ゲーム性を持たせる②レベルアップする。この2点だと考えました。

①ゲーム性を持たせるとは、「視点」を変えるということです。どうすれば楽しくなるかを考え、例えば視点を「淡々と作業すること」→「タイムアタックや競争などの遊び」と変え、全力で楽しむということです。もちろん、遊びといってもふざけることやそれによって迷惑をかけることとは違うので一定の範囲内であることが条件です。

②レベルアップするとは、視点を変えるだけでなく「視座」を上げるということです。どうすればより速く効率的にできるかを考え、工夫を加えながらPDCAサイクルを回します。また小さな成長にも目を向け「さっきよりも速くできた・上手くなった」など他社比較ではなく、過去の自分と比較することが重要です。

マングローブの面白さと島暮らしの大変さ
オヒルギのたこさんウインナー

【マングローブの面白さ】 

就業先で学んだマングローブについてのお話をさせてください。

まず、マングローブとは何か?と聞いた時に、マングローブという「木」があると勘違いされることが多いです。しかし、実はマングローブという「森」があるが正しい答えです。淡水と海水が混ざった「汽水域」に群生する植物をまとめてマングローブと呼びます。

そんな奄美大島のマングローブは、主に2種類の植物で構成されます。それは、「オヒルギ」と「メヒルギ」です。「オヒルギ」は、葉が大きく、たこさんウインナーの様な赤い花をつけるのが特徴です。一方「メヒルギ」は、オヒルギと比べると葉が小さく、背が高いのが特徴です。この2種類が奄美大島のマングローブの6~7割を占めています。

そしてマングローブには不思議な特徴があります。それは、汽水域で成長することができる植物であることです。つまり、海水があっても成長できる植物なのです。普通の植物に海水を与えると枯れてしまいますが、マングローブは枯れることなく成長していきます。なぜマングローブは汽水で成長できるのかというと、「根」にその秘密があります。マングローブの根はフィルター状になっており、海水をろ過することで淡水に変えることができます。先程出てきた「メヒルギ」はこのろ過能力が高い一方で、「オヒルギ」はろ過能力が劣ります。そのため、体内に残った海水は、一房に一枚塩分を溜め込んだ「黄色い葉」を意図的に作り、その葉を落とすことで体内の塩分を調整します。この様な植物の工夫が非常に面白い点です。

また、近年マングローブは世界的にかなり重宝されています。それはなぜかと言うと、マングローブは陸上の植物と比べて二酸化炭素の吸収量が約2倍あり、地球温暖化の防止に大きく貢献しているからです。そのため、マングローブ周辺は非常に空気がきれいで、地元に帰った時に空気の違いに驚いた程でした。

様々な面白い特徴を持ったマングローブに会いに行くのはいかがでしょうか。

 

【島暮らしの大変さ】

振り返ると、就業期間中の大半が台風でした。首都圏での台風による影響と言えば、交通インフラの乱れや大雨・暴風が挙げられます。しかし、奄美大島などの島では違った影響があります。それは、大雨・暴風だけでなく、食べ物などの生活物資の不足や、観光客の減少による売上の減少(観光業のみ)など日常生活に直接的な影響が出ることです。具体的には、貨物船が港に入れないため、スーパーに入荷がなく、菓子パン・水・お惣菜・カップラーメンなどが段々と減っていき、実際に私も「スーパーに行っても食べたいものがない」という状況に遭いました。また、飛行機や観光船も止まるため、新たな観光客が島に入れず、予約キャンセルなど売上に大きな影響を与えてしまいます。

しかし、奄美の皆さんはそんな状況でも、台風はしょうがないことだからと言って食料の買いだめや他の仕事をするなど、この状況は当たり前と捉えて次の行動をしている姿を見てたくましさを感じました。

このように台風一つとっても首都圏と島とでは生活には大きな差があるため、2週間の生活の中で良い所も含めて多くのギャップを感じることができ、ただの旅行では経験できない島暮らしの大変さを実感することができました。

島での遊び方
ナイトツアーで遭遇したクロウサギ

台風が抜けたある日の仕事終わりに、お世話になった社員さん2人に遊びに連れ出してもらいました。

社員さん行きつけのお店で夕飯を頂いた後、夜釣りとナイトツアーを楽しみました。

普段は釣り経験が全くない私ですが、初心者でも楽しめる様にと、餌などの準備や釣り上げる瞬間で竿を握らせて頂いたりなど、沢山のおもてなしを頂きました。この経験の中で特に興奮したのが、満点の星とサメ(小型)を釣り上げたことです。釣り場に到着すると、辺りは照明がなく真っ暗でした。そのため、空を見上げると一つ一つの星がハッキリと見え、星との距離感の近さに圧倒されました。地元や都会では中々見ることができない星空の下で釣りの当たりを待つ時間は格別でした。また、大型の魚を狙った餌を付けた竿でサメを釣り上げた時は、サメが釣れること自体に驚きましたし、人生で初めてサメを手掴みで持ちました。小型とはいえ約4~5㎏と重みがあり、近くで見ると迫力も感じました。

夜釣りを楽しんだ後は、クロウサギなど奄美特有の生き物を見るために、車で山を登り、即席でナイトツアーに連れてもらいました。山道に街頭は無いため、車のヘッドライトを頼りに山道を登ると、クロウサギを始め、アマミヤマシギ、オットンガエル、アカマタ、リュウキュウコノハズクなど奄美の固有種を含めて数多くの生き物と遭遇することができました。特に、クロウサギとは運良く10匹程と遭遇しました。

この一日を通して、地元ではできない遊びを経験することができ、色濃い思い出を作ることができました。改めて2人の社員さんには感謝の気持ちでいっぱいです。

マテリアの滝
休憩中の園内で
あやまる岬