島キャン実施レポート

うれしい!たのしい!大好き!上五島

2018年夏 新上五島町
五島バックパッカーズぽれ
8/28~9/11
藤女子大学/文学部  平賀千尋
初めて会った時から違うものを感じてた島
「はたらきたくない!」
ぽれの外観。真ん中の凹んでいる部分は中庭です。

北に住むものは南に憧れ、南に住むものは北に憧れる。正反対のものに惹かれるこの現象は、相補性の法則と呼ばれているようです。とにかく、北に住む私にとって憧れの南の島生活、行かないわけにはいきませんでした。島キャンの志望動機は不純でした。

私が就業兼宿泊していたのは「五島バックパッカーズぽれ」というゲストハウスです。ゲストハウス、とは?個々で違う点はありますが、一般的なホテルより宿泊料金が安く、共有スペースで宿泊者が交流できる、宿泊者同士の距離が近い宿泊所です。

一日の大まか仕事内容は、①チェックアウト(〜10:00)・お客様のお見送り、②室内清掃・ベッドメイク、③チェックイン(16:00〜)、ここまでは、一般的なホテルと同じだと思います。ゲストハウスが他と違うのは、気軽な人との交流ができるところだと私は思っています。

ゲストハウスとの出会いは、人との出会いでもありました。ゲストハウスには様々な旅人がやってきます。たくさんの方とお話をして、働き方は一様ではないのだと気づかせられました。就職することだけがはたらき方ではないのだと、もっといろんな生き方があるのだと、教えていただきました。

ただ、島に来る動機が不純でしたし、上五島(新上五島町)での居心地が良くて、はたらきたくないなと思う時がありました。仕事に関する自分の考えが甘かったなと思います。学ばせていただく身にも関わらず、とても生意気でした。

上五島のとある宿は、寝具類の洗濯、部屋の清掃などがおざなりでした。当然現代は情報社会ですから、宿泊者レビューに書かれ、潰れてしまったそうです。この話を聞いて、私は考えました。なぜ綺麗に清掃するのか?なぜ気持ちのいい接客が求められているのか?宿泊者の方に良い思いをしてほしいのはもちろんですが、結局は自分たちに成果が返ってきます。「はたらく」と言っても、色んな方法があると思いますが、自分ひとりでははたらくことはできません。相手がいてこそはたくことができる、当たり前のことですが、私はこの2週間で身をもって体感することができました。

「ガソリンスタンド開いてない!」
上五島は漁業が盛んです。美味しいイカ!

軽いカルチャーショックを受けました。狭い日本とは言え、私が住んでいる北海道と就業先の上五島は北と南です。毎日が発見の連続でした。日曜日に開いているガソリンスタンドがほとんどないこと。Gとの初遭遇。窓が二重構造じゃないこと。島という環境に驚き、気候の違いにも驚き、何もかもが新鮮だったので、大きなランドセルを背負った小学1年生のような気持ちで地域と向き合うことができました。

コンビニが遠いと聞いたので不安に感じていましたが、生活に困ることは全くなかったです。近くに何でも揃うスーパー、百円均一のショップがあります。美味しい飲食店もたくさんありました。娯楽はカラオケやパチンコ。漁業が盛んで、上五島で獲れた魚は家庭で食べられます。足りないものは本土に行き、集めながらもその自立したスタイルに、島は色々凝縮された小さな国と捉えることができると思いました。

2018年7月に、長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産は世界文化遺産に登録されました。上五島の頭ケ島の集落はその一つです。その中にある頭ケ島教会は、パーク&ライド方式と言われる方針を採っています。これは、集落の自然を守るために、教会までシャトルバス(車)で観光客を送迎する方式です。観光客のマナーの悪さが謳われる昨今で考えられるべき事柄なのではないのかと思いました。

私がぽれに就業した2週間は繁盛期ではないにも関わらず、毎日宿泊客が絶えず、これは喜ばしいことだと感じていました。ですが、上五島に住むある方は「この繁盛は今だけだと思うし、これ以上観光客が増えても嬉しくない」とおっしゃっていました。果たして、これは観光地側だけが頑張らなければいけないことなのでしょうか。上記に書いたように観光客のモラルが問われる問題です。島キャンの意義にもつながりますし、大きな課題であると感じました。

「上五島ロス」
上五島、また逢う日まで。

私にとって生きる世界は家族、友達、教授、本当に限られたものでした。広い地に住んでいるはずの自分は、決して広くはない島に住んでいる皆さんに世界の広さを教えられました。

日々の生活に追われる中での2週間と、上五島での2週間は違いました。上五島での2週間はゆっくり流れていて、自分のことを見つめ直す時間もありました。上五島には何にもないよって皆さんは口を揃えるけど、そんなことないです。都会にはないものがあります。最初に相補性の法則と言いましたが、ないものを埋め合っていける関係性ができたらなと思います。

もし、島キャンに行こうか迷っている人がいたら、行ってみてほしい。きっかけは何だっていいと思うんです。綺麗な海で泳ぎたい、とか。彼女が欲しいから出会いを求めて来た、とか。行こうと決めてから目的を決めてもいいと思います。スマホの情報では得られないことが島キャンにはあります。

この2週間で、生きる・はたらく活力をいただきました。いただいてばかりだった2週間。これから自分に何ができるかを考え日々を過ごしたいと思います。私の島キャンはまだ終わっていません。上五島、近いうちに必ず帰ります!

ぽれから小走りして数秒で海です!
共有スペースには旅に関する本がいっぱい。
休日は釣りを楽しみました。