島キャン実施レポート

国直での2週間を振り返って

2022年夏 奄美大島
NPO法人TAMASU
8/2~8/15
東京海洋大学/大学院海洋生命資源科学専攻  月岡鉄平
働き方・集落・海
働くことについて
馴染みの川で仕事の汗を流す

国直集落に拠点を置くTAMASUでは、南西諸島に引けを取らない(むしろそれよりも豊かな)サンゴ礁でのシュノーケリングや泳ぎ釣り、天然の小川でのたなが採りといったツアーの運営を行っている。これらはいずれも大和村の自然を舞台としたものであり、村民たちが子供のころから遊びでやってきたことをアレンジしたものである。つまり、参加者はツアーを通じて村民たちの過ごしてきた時間を体験できるのである。このことが普通の自然体験ツアーとの大きな違いであり、このツアーならではの独特の魅力であると感じた。

そのようなツアー業務のさなかで、スタッフの一人は「自分たちが楽しめれば、お客さんにも楽しんでもらえる」と教えてくれた。この言葉はとても印象に残った。集落の住民との時間の共有を強みとするツアーを行っていくのであれば、ただただツアーのポイントを案内していくだけではなく、案内する側も参加者とともに楽しむ姿勢で仕事に臨むべきということである。いま思うと、仕事を通じてお客さんとたくさん話せと念を押されたのは、おそらくこのためなのだと思う。業務の中での積極的なコミュニケーションは、ツアーの楽しさをお客さんと分かち合うための有効な手段であったことに気づかされた。

仕事に対するこのような姿勢は、今回お手伝いさせていただいたツアー業務だけでなく、並行して携わった飲食業や宿泊業も含めて、あらゆる職業に共通する大切な考え方であると感じた。今回の就業を通じて、いずれ自分が社会人として仕事をするようになったときには、多くの人とのコミュニケーションを通じて、モノやサービスだけでなく時間的な体験をも提供できるような仕事ができるよう心掛けたいと考えるようになった。このように、自分の理想とする未来像や働き方を考えていくうえで、とても貴重な2週間を過ごすことができた。

国直集落について
1日の終わり

国直集落は砂浜に隣接しており、海と人々の距離が非常に近い。季節によって行事やイベントが多数催されるようだが、2週間にわたる生活の中で最も日常的かつ印象的だったのは、集落の住民たちが毎日夕方に砂浜へと降りてきて、日が沈むのを眺めながら談笑する習慣を持っていることである。この間は、時間がとてもゆったりと流れているように感じた。自分もこの時間を通じて毎日集落の住民や観光客とふれあい、少しずつ集落の日常に溶け込んでいくような感覚を覚えた。

集落に住む人々は思っていたよりも年齢層が若く、観光客も含めて人々の交流がとても盛んな集落だった。集落で育った子供は学校を出たのちに内地へ働きに出る人が多いが、その後再び集落に戻ってくるという人も一定数いるようだ。就業中にお世話になったスタッフたちもみなそうで、彼らは集落が一番安心するとのことだった。おそらく集落での生活が最もなじんでいるのだと思う。私も地元の埼玉や都内での生活が一番しっくり来るので、彼らのこうした感情にはとても共感を覚えた。国直とこちらとでは環境が全く違うものの、自分が生まれ育ち慣れ親しんだ土地こそが最も安心する場所だという気持ちは、お互いに共通するものであることに気づいた。

集落には食べ物を買えるところがなく、奄美市内まで車で出なければならない。そのなかで、日々の食事や洗濯や寝るところを用意していただいたのが本当に暖かく、感謝しきれない。島の風習に合わせた料理や集落で採れた食べ物をふるまっていただき、本当においしかったのはもちろんのこと、何よりもお気持ちがとてもうれしかった。奄美大島自体はなかなか大きな島だったが、国直の中だけでも一日中楽しく過ごせたのは、TAMASUをはじめ集落の人々の後ろ盾が非常に大きかったことを実感している。

国直の海について
ハマクマノミ

国直海岸は、以前は砂浜のすぐそばまでサンゴ礁が広がっていたとのことだったが、現在では砂浜から数十メートル離れたところよりサンゴ礁が形成されていた。浜から見て左側は比較的遠浅のサンゴ礁が続き、クマノミの見られるポイントをいくつか発見した。内湾で夏場はずっと凪が広がっているにもかかわらず潮通しが非常によく、そのためか砂浜から比較的近いところでも多様な種類のサンゴが非常に生き生きと生育していた。これまで趣味でいろいろな場所をシュノーケリングしてきたが、ここまで手軽にサンゴと触れ合える海岸は初めてだったので、とても興奮した。

一方で湾の中央に目を向けると、水深が一気に数十メートルほど落ち込むドロップオフがあった。浅瀬のシュノーケリングではまずお目にかかることのできない大きな魚の群れがたくさん見られた。おそらく、潮流やうねりの心配を伴わずに誰でも気軽にあの光景を堪能できるというポイントは、かなり稀なのではないだろうか。いまだにその光景が目から離れず、またいつか遊びに行ったときには、ぜひとも再びお目にかかりたい。独特な地形が生み出す国直ならではの海の中をしっかりと楽しむことができ、非常に楽しい時間を過ごすことができた。同タームの島キャン生と国直に遊びに来て、がっつり楽しんでもらえたのも忘れられない思い出の一つである。

ミドリイシのポリプ
お手製、島瓜ともずくの味噌汁
どこまでも海