島キャン実施レポート

人も気候も温かい奄美大島へ

2022年夏 奄美大島
THE SCENE
8/30~9/13
中京大学/総合政策学部  髙田まお
楽しむ・楽しんでもらう
マニュアルのない仕事
清掃を終えた客室から見る海。毎日海のコンディションが変わるから見飽きない。

 私は奄美大島の最南端にあるホテルTHE SCENEで2週間就業しました。このホテルは奄美大島の国立公園の敷地に建っている唯一のホテルです。周囲には美しい海と、目にも鮮やかな山々があります。

 ホテルの大きな目的は「旅をすることで体を癒してもらう」ということです。一般的な旅行はただ楽しむことを念頭に置いているものですがここは少し違います。ホテルには、ヨガのレッスンに参加することができたり、美しい海の前でマッサージをしてもらえたり、美味しいご飯を食べたりと非日常を感じつつリラックスできることのできるプランがあります。そんな目的の中働く私は「お客様が楽しんでくださることならとことんやる」ということを先輩スタッフに教えていただきました。つまり仕事にはマニュアルというものがありません。正直このお話を聞いたとき間違ったことをしてはいけないから保守的に動いた方がいい。とも考えましたが、自ら決意した2週間を楽しむ・学びあるものにするために積極的に仕事をすることを決めました。

 お仕事の一つには客室の清掃があります。午前中にお客様がチェックアウトをした後のお部屋を順々に掃除をしてきます。私は脱衣所兼トイレとお風呂場の掃除を主に担当しました。水回りは最も清潔感が問われる場所であるため掃除にも気合が入ります。奄美の水はミネラル分が多いため水垢が付きやすいそうでスポンジで擦るのにも気を遣いました。お風呂場は水滴が一切残らないようにバスタオルで隅々まで拭き前のお客様の使用感が無いように努めました。就業期間中に私は自分がお客さんだったらこのぐらい綺麗ならば絶対に嬉しいと誇れるようにきれいに掃除がでるようになりました。

 お仕事のもう一つに到着したお客様を駐車場までお迎えに行くということがあります。駐車場からホテルのロビーまでは3分ほどの短い距離ですがお客様の荷物を運び、軽くお話をするといったことを行いました。最初は、先輩スタッフと一緒にお迎えに行きましたが、私は大きなキャリーケースを両手に持つことで精一杯でした。石畳のところはキャリーケースのタイヤが擦れてしまうため持ち上げて運ぶ必要がありました。力仕事で慣れるまでは筋肉痛にもなりました。就業7日目、少しずつお仕事にも慣れたため一人でお迎えに行かせてもらえました。女性二人組のお客様で、到着時に夕方に行われるヨガを見ながら「ヨガの時間に間に合わなかったな。」とお話されているのを聞きました。それを聞き私は「明日の朝に行われるヨガもございますよ。」と一声掛けてみました。興味をもっていただいたようだったので、このお話を受付のスタッフに引き継ぎました。お客様の荷物をお部屋に運んだ後先輩スタッフから「さっきのお客様に朝ヨガの予約とって貰ったよ!ナイス!」と声を掛けて頂きました。とても嬉しかったです。あの時、お客様のためを思えた行動が起こせたことはこの島キャンでの大きな成長です。誰かのために何かをしたい。そう思う気持ちは今でも大切にしたいものです。

たくましい
台風が最接近した翌日に撮った写真。車2台分しかない道路のため倒木を気を付けて避けて通りました。

 自然豊かな奄美大島ですが、自然災害も体験することができました。9月に入ってすぐに台風11号が来るというニュースを小耳に挟みました。今まで、私の住んでいる地域はさほど台風の被害がないような地域なのでそれほど台風に対して警戒したことはありませんでした。しかし、島の人は台風の発生時から警戒を怠りません。

 午前中の客室清掃を終え、スタッフの方々と雑談に花を咲かせていたときに「台風が来ると食料を運ぶ船が来ないから買いだめをしたほうがいいよ」と教えていただきました。それを聞き私は、近隣にある唯一のスーパーへ駆け込みました。早い段階で台風対策に対することを教えて頂いたので買い物をすることはできましたが、翌日はスーパーの生鮮食品が無くなっていました。そのほかにも、お借りしている宿泊先の持ち主の方が暴風対策として養生テープをくださったり、断水に備えてお風呂に水を溜めるというアドバイスを実行したりと慣れないながらに自分たちで対策をしました。台風が最接近した9月5日は家で待機していましたが、感じたことのない強風と揺れる窓ガラスが少し怖かったです。

 幸いなことに大きな被害はなかったものの、台風の前後2日間はスーパーの食品は品薄状態でした。また、就業先は飛行機が飛ばない関係でお客様が来ることができない、一時的な停電のため冷凍庫の霜が溶けて水浸しになる等のことが起きたそうです。普段はニュースでみるような台風の現状を自らが体験することによって島に暮らす人の苦労を知ることができました。直撃する大きな台風は奄美大島の人にとって久しぶりのようだったので、町では台風に関する話をよく聞きました。島に始めて来る私のように、知らない人には手を差し伸べてくれることから支え合って生活していることがわかりました。台風に動揺していた私とは違い、島の人は自然に文句一つ言うことなくたくましい。

島キャンありがとう
お休みの日に見に行った日の出。朝5時に起きた甲斐はありますね。

 この島キャンというチャレンジは私に大きな自信を与えてくれました。一人で飛行機に乗ったこともなければ、2週間も自炊をしながら生活することはとても大変なことでした。しかし2週間無事やり遂げた今この企画に参加することができて本当によかったという気持ちでいっぱいです。

 この文章を読んでくださる人の中には、「結果論としての思いにすぎないじゃないか」と思う人もいるかもしれません。しかし、どんな結果にするかも自分自身の責任です。「他責じゃなくて自責で物事を考えてみる」就業先のホテルの基礎研修で教えていただいたことです。辛かった出来事も笑い話にすることができるのも自分自身だということに気づくことができました。

 島キャンに参加して本当によかったです。お世話になったすべての人に感謝します。ありがとうございました。

 

入島初日に食べた鶏飯。旅の疲れも癒される優しい鳥出汁が染みました。
それいゆふぁ~むで飲んだパッションフルーツとたんかんスムージー。本当に美味しかったです。
宿泊施設から徒歩1分の海。毎日散歩しました。