島キャン実施レポート

立場が変わることで見えてくる現実と視野の広がりを感じた2週間

2017年夏 奄美大島
まちづくり奄美
2017年8月30日~9月12日
武蔵野大学/人間科学部  近藤 拓哉
世界自然遺産に登録予定の奄美大島が抱える観光への諸問題と島の働きかけを知る
働いて、はじめてわかる観光名所の苦悩と努力
名瀬市内には猫がたくさんいます。

 私はプロジェクトを立ち上げることに興味があり、これまでも部活動で企画考案をした経験があるため、まちづくり奄美での観光マップ作りに期待と自信を持っていました。しかし、現実はそう甘くありません。「観光」と聞くと、その地域が栄え裕福になるだろうと思いがちですが、観光名所になるということは奄美大島の自然・文化・伝統を守らなければなりません。そして、未来へ向けた長期的な幸福度の向上をも考えなければなりません。名瀬商店街でまち歩きをしていると、野良猫をたくさん見かけます。私はその光景をみて「ねこのいる港町」として売り出せばいいのではないかと思っていました。このことを伝えると野良猫は天然記念物であるアマミノクロウサギを捕食する恐れがあると教えてくださいました。奄美大島の自然を守るためには、こうした野良猫問題を処理しなければなりません。また、排泄物を考慮し毎朝名瀬の中央通りではモップ掛けを行っているのです。こうした事実は、おそらく観光客として歩いていたら知らないことであったと思います。現地で働くという立場に置かれて、気づかされることがたくさんありました。

文化と伝統を守るために「機会」を大切にする
満月の日に踊る「八月踊り」

 就業先での何事も経験が大事という教えから、様々なことを体験する機会をいただきました。そのひとつに大和村の大棚集落にて「八月踊り」を体験してきました。この日は旧暦の送り盆であったため、集落の老若男女が集まっていました。東京から来た何も知らない若者も温かく迎えて下さり、とても楽しい夜となりました。踊り終わり集落の方と話す機会があり、そこで伝統を受け継ぐ困難さを知ることになります。奄美大島の伝統である八月踊りや島唄、そして島の方言は多くの方が共有しているものだと思っていました。しかし、現在そうした伝統は薄れつつあるそうです。八月踊りや島唄など、日本でここまで唄文化を大切にする地域が他にあったでしょうか。その消えてしまいそうな伝統を、集落の方々は機会を与えて継承しようとしています。小学校で島唄を勉強したり、八月踊りをイベントとして開催したり、日常生活で方言を積極的に使っていこうとしたり、様々な努力をなされていました。文化と伝統を守るためには多くの体験と機会がとても大切だと思いました。

島をよく知ったからこそ「地元」のことも知りたくなる
名瀬で見ることができる絶景

 まちづくり奄美での就業も最終日となり、今までまち歩きをしてきた名瀬についてAiAi
ひろばにて発表をさせていただきました。たくさんの観光客が奄美大島に訪れ、名瀬をもうひとつの故郷のように「帰りたい」と思えるよう様々な観点から環境を整えていくこと、観光名所になる上で忘れてほしくない「地元愛」についてなどを職場の皆さんと話しました。その中で2週間お世話になった元野建三さんがおっしゃっていた言葉がもっとも印象に残っています。「島キャン生が奄美大島を好きになってくれるのは嬉しい。けど一度外に出てみてわかる自分の地元の良さに気づいてもっと地元を好きになってほしい。」この言葉は、奄美大島という地元が大好きだからこそ言える言葉ではないでしょうか。私はまち歩きを通じて「人が気づかない小さな良いところ」に気づく力を養いました。その力を地元でも発揮し、より地元を、友人を、族を、そして住んでいるこの環境を好きになろうと思います。